株式会社タノシマスの木村浩之氏インタビュー(日本語版)

こんにちは、今回はインタビューを快諾して頂きありがとうございました。開発チームのメンバー及びタノシマス社で行っている作業についてご紹介いただけますか?

A: いえいえ、こちらこそこのような機会をいただき、ありがとうございます!いただきました質問に張り切ってお答えしていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。先ずは簡単な自己紹介をしておきます。みなさま、はじめまして、株式会社タノシマスの代表取締役の木村と申します。僕はこれまでゲーム業界で10年ほど勤めてきまして、過去にシャイニングフォースやランドストーカーの開発をしたことで有名な株式会社クライマックスや、シューティングゲームで有名な企業である株式会社ケイブなどに在籍しておりました。

その他にもちょっとだけですが、バンダイナムコスタジオで仕事をお手伝いするなど、あちこちいろんな会社で頑張ってきました。

この度、2015年の4月に創業しました、弊社タノシマスですが、プランナー兼デザイナーである僕と、プログラマーの2名しかいない小さな会社です。下請けとしてのゲーム開発は行っておらず、自社のオリジナルタイトルを開発から販売まですべてを行っていく予定で作業をしております。

ゲーム業界に入ったきっかけをご教示下さい。

A: 僕の子供の頃がちょうどファミコンの黎明期だったのもあって、スーパーマリオブラザーズ、ドラゴンクエスト、ファイナルファンタジー、ストリートファイターなどの名作ゲームに触れる機会が多かったので、ゲーム業界に入って、いつかは自分でゲームを作りたいと思っていました。といっても、僕はプログラムやデザインができるわけでもなかったので、実際に入るのにはかなり苦労しましたね…。プログラムも学校で一度は勉強したのですが、難し過ぎて断念したという過去もあります。そんな僕でも熱意だけで何とかやってこれていますから驚きです。

以前はケイブに努めていたと思われますがケイブに入りたいと思ったきっかけは?またあのときに担当していたソフトはどのような作品だったでしょうか?ケイブにいた時代からの面白い思い出等はありますでしょうか?

A: ケイブに入ろうと思ったキッカケは、「シューティングゲームばかりを作っている会社なので、逆にいろんなゲームが作れると思っていたから」です。これを言うとみなさんとても驚かれるのですが、僕はケイブに入るまで、あまり弾幕系のシューティングゲームを遊んだことはありませんでしたし、ケイブがシューティングゲームで有名なことは知っていましたが、どんなゲームを作っているのかまではそれほど詳しく知りませんでした。そもそも、ケイブに入るまでの僕はロールプレイングゲームやアクションゲームの開発に携わることがほとんどで、シューティングゲームの開発なんてやったこともありませんでしたしね。逆に、当時の上司が、僕のそういった部分を買ってくれたのでケイブに入社できたのだと思います。上司はシューティングゲーム以外の開発も行っていきたいと思っていたようで、シューティングゲーム以外の知識を持った人間を入れたかったようで、そこにちょうど僕がきたという感じです。といっても、僕が入った部署は、まだまだシューティングゲーム開発が大半を占めていましたので、入社してしばらくはシューティングゲームの開発にばかり参加していました。僕は主に3つのシューティングゲーム開発に携わりました。最初に携わったゲームタイトルは「赤い刀真」になるのですが、実は僕が一番力を入れたところはシューティングゲーム部分ではなく、ユーザーインターフェイスの設計なのです。遊んでみてもらえばわかるのですが、赤い刀真だけ、ユーザーインターフェイスの作りが他のタイトルとは全く違います。

画面をブラックアウトさせずにシームレスで切り変えることができるように設計しました。そのほかにも、リアルタイムで画面全体の色を変えることで、自分がどの画面を見ているのかをわかりやすくするなどいろんな工夫をしています。次に制作に関わったのは、アーケード版の「怒首領蜂最大往生」になります。こちらも、シューティングゲーム部分ではなく、ユーザーインターフェイスの設計や演出部分にこだわっています。キャラクターを画面に登場させたり、状況に応じてボイスを発生させたり、過去の作品を連想させるようなボスの登場シーンを演出するといったことに注力しました。特に、ボイスの再生には力を入れましたね。弾幕系シューティングゲームって、難しくなると、敵弾を避けるのに必死になってしまい、ついつい自機ばかりを見がちで、画面の上の方にあるボスのライフ残量を見る余裕がなくなるという状況になってしまうので、なるべく自機を見続けていても問題のないよう、ゲームの進行状況をボイスで知らせるようにし、耳でも状況が把握できるように心がけました。演出部分については、怒首領蜂大往生を彷彿させるようなものを追加することで、シリーズ作品であることを強調したり、一緒に搭乗するキャラクターを画面に登場することで、プレイヤーを応援したり励ましたりしている感じが出るようにもしました。

最後に携わったシューティングゲームは「DODONPACHI MAXIMUM」になります。これは、当時のケイブは、海外での知名度が低いということもあって、海外の方にケイブをもっと知ってもらおうと、カタログのようなタイトルを出せたらどうだろうということで開発をスタートさせた経緯があります。初のスマートフォン向けのオリジナルタイトルということもあり、モバイル端末のスペックに悩まされることが多かったタイトルですね。当時のスマートフォン端末の性能は現在のものに比べると非常に低かったですし、60フレームでの動作を端末側がサポートしていなかったのもあって、思ったようには開発ができなかったですね。このタイトルでも、僕が頑張った部分はシューティングゲーム部分ではなく、「操作系の設計」です。当時、他のメーカーがスマートフォンで販売していたシューティングゲームは、ゲーム画面内に「ボタン」が配置されているものばかりでした。弾幕系シューティングゲームは画面弾がたくさん表示されますので、やはり弾を避けるのに没頭したいと思うのですが、画面内にボタンがあると邪魔になってしまう。そういうこともあり、DODONPACHI MAXIMUMでは、画面内にボタンを配置しなくてもショットやボムが撃てる操作系を実現しまして、スマートフォン向けシューティングゲームにおける新たな操作フォーマットを世界に向けて提示できたと思っています。以上がケイブで僕がやってきたことになるわけですが、みなさんが想像しているようなシューティングゲームにおけるゲーム部分にはそれほど関わっておりません。元々、ケイブにはシューティングゲームを開発する素晴らしいスタッフがいましたので、僕が口を出さずとも良いものになるのです。そういうこともあり、僕は違った形でスタッフのサポートをしてきたと思っています。

ケイブをなぜ退社しましたでしょうか?タノシマスを設立したきっかけは何だったでしょうか?

A: ケイブを退社した理由は非常にシンプルで、ゲーム業界を去ろうと思ったからです。僕は長年ゲーム業界で頑張ってきましたが、やはり仕事は過酷で身体を壊すこともよくありました。そんな中、結婚をし、人並みの健康と経済的な安定を求めたのです。会社によっても違うので、すべてとは言い切れない部分もあると思いますが、日本のゲーム会社の給料はみなさんが思っているほど高くはなく、福利厚生も充実していないのが実情です。これまでは自分のためだけに自分のやりたいことをやってきたので、安い賃金でも続けてこられましたが、今後は自分がやりたいことよりも、家族を守ることを優先して、福利厚生のある安定した仕事に就こうと考えたからです。

こうして、妻にゲームに関わる仕事から引退することを告げたのです。しかし、妻が口にしたのは「これまで散々、人のために尽くしてきたのだから、今度は会社を作って自分がやりたいことのために頑張ってほしい、ゲーム開発を楽しそうにやってきたあなたが良くて結婚したのだからやめてほしくない」という意外なものだったのです。僕はその言葉で心変わりをしまして、ゲーム業界を志す若者にゲーム制作の楽しさを知ってもらいと思い、会社を設立しました。

タノシマスという名前を選んだ理由は?

A: タノシマスといのは、日本語で「楽しませる」という意味です。自分たちの開発したゲームで、お客さんを楽しませたいという願いを込めて、この名前にしました。

『赤とブルー』のゲーム性についてご説明いただけますか?スコアシステムはどのような遊び方になっていますでしょうか?

A: アカとブルーのスコアシステムは非常にシンプルで、出現する敵機に接近して攻撃、または撃破することで高得点が得られます。これはボムを使用した時も同様です。特殊な部分があるとすれば、従来のシューティングゲームと違って、ボムを使用しても無敵にはなりません。ボムもショットと同様、攻撃の手段となります。アカとブルーでは、このボムをどのタイミングで、どこに向けて発射するかが高得点を得るためのカギとなります。さらに、ボムは敵弾に当てることで、ボムを発射するのに必要なエネルギーをチャージすることが可能です。この性質を利用して、ピンチをチャンスに変えていくといった駆け引きを味わえるシューティングゲームとなっています。

『赤とブルー』のセル・シェディングスタイルはあまりSTGで見かけるものではありません。硬派なビジュアルにせずセルシェイディングを選んだ理由は?

A: 厳密にいうとセルシェーディングではなく、アカとブルー用に、鉛筆で描いた線のような表現のラインをリアルタイムで表示する専用のシェーダーを自社で制作し実装しています。ビジュアルの部分で他のシューティングゲームと差別化したいと思い、あまり使われていない手法を取り入れることで、お客さんにインパクトを与えることを狙いとしています。見た目とは裏腹に、シナリオは割と硬派ですよ。

ご自分の一番好きなシューティングタイトルは何でしょうか?『赤とブルー』のゲーム性に影響をしている作品でしょうか?

A: 僕の好きなシューティングゲームというと、スクロール型のシューティングではないですが、スターフォックス64やエースコンバット5、エアフォースデルタ ブルーウィングナイツが好きですね。アカとブルーにゲーム性などでは影響はないのですが、演出を作る上で参考にしている部分はあります。特にエアフォースデルタ ブルーウィングナイツは、「こんなところを飛行機が飛ぶのか?」といった普通では考えられないようなミッションが満載で、遊んでいてワクワクするのです。そういうところは影響を受けているかもしれません。

ケイブの『ゴシックは魔法乙女』が成功したことによってモバイルプラットフォームにおけるSTGの未来はあると思いますでしょうか?

A: モバイルプラットフォームに限らず、スクロール型シューティングゲームにはまだまだいろんな可能性があると思います。スクロール型シューティングゲームの未来を切り開くには、「これまでの概念」を捨てなければならないと僕は思っています。ゴシックは魔法乙女でもそういった過去シューティングゲームフォーマットの概念にとらわれず、新しいものをどんどん取り入れ、プラットフォームや時代の流れに合わせた新たなシューティングゲームのフォーマットを完成させているということが成功につながっていると思うのです。アカとブルーを発表した際に、「アーケードコントローラーで遊べないシューティングゲームはつまらない」だとか「なぜPCでリリースしないの」といったことを言われましたが、今現在、幅広い年齢層に普及しているプラットフォームは「スマートフォン」なので、1人でも多くの方に遊んでいただくためにも、スマートフォンにゲームを出していくのが1番であると思っています。ハードを購入するというハードルも無いですしね。時代の流れと共に、みなさんが手にするプラットフォームは変わっていきます。その時代の流れに対して、スクロール型シューティングゲームもプラットフォームに併せた進化を遂げていくのだと考えれば、無くなっていくことはないのではないでしょうか。僕ら開発者はプラットフォームに合わせた遊び方を提案し続けなくてはなりませんし、みなさまはその遊び方に対して、「新しいもの」として評価をしていけばよいと思います。昔のような遊び方が出来ないから「ダメなゲーム」としてしまったら、先に進むことは出来ません。プラットフォームと共にゲームジャンルも滅びてしまっては、元も子もないです。

モバイルプラットフォームに向けたゲームを企画するときに、モバイルならではの強みは何でしょうか?またその逆で、モバイルならではの苦労ポイントは何でしょうか?

A: モバイルプラットフォームの強みは何といっても、持っている人の数が多いこと、端末だけでネットワークにつながること、そしてどこにでも持ち運びができるという点です。ただ、開発者にとっては苦労する部分の方が多いと思います。その中でも、一番の苦労は、端末のスペック情報を見ると家庭用ゲーム機と同じようなスペックがあるのだと勘違いされやすいところだと思っています。たしかに現在のスマートフォンはスペックだけ見ればかなりのものなのですが、そのスペックを全てゲームに使用できるわけではありません。搭載されているOSや電話機能、裏側で動いているアプリなどがすべて同時に動作していますから、実際にゲーム開発でやれることはそれほど多くはないです。また、マシンパワーをフル活用することもできなくはないですが、バッテリーの消耗が激しくなってしまうので、いざと言うときに電話機能が使えなくなるといったこともあります。そういったことに気を使いながらの開発は苦労の連続です。

最近のSTGは非常にキャラものが多くて、昔のメカメカしい自機デザインよりも魅力のあるパイロットを載せて作っている方が多い気がします。『赤とブルー』はこの両極端の間にあると思いますが、世界観に関してはその理解は合っていますでしょうか?若しくはかなりストーリー重視になりますか?

A: アカとブルーはキャラクター重視でも、昔寄りのメカ重視のものでもなく、ストーリー重視となっております。メカのデザインについては、スマートフォンの小さい画面で見ても敵と認識しやすいよう、あまり複雑な形状にせず、なるべくシンプルなデザインにするようにしています。

海外での展開に関しては予定ありますでしょうか?

現段階では海外での展開については未定となっています。正直、僕がこれまで貯めてきた貯金でこれまで0開発を進めてきたのですが、そろそろその貯金も底を尽きそうです。僕が英語を喋れれば良いのですが、日本語しか話せないので困っています。誰か、海外にも販売できるよう助けてください。